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事務連絡
令和5年6月30日

  都道府県
各 指定都市 障害保健福祉主管部(局) 御中
  中核市

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 企画課
障害福祉課


障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく自立支援給付と
介護保険制度の適用関係等に係る留意事項及び運用の具体例等について

 標記については、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」(平成19年3月28日障企発第0328002号・障障発第0328002号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長・障害福祉課長連名通知。以下「適用関係通知」という。)でお示しするとともに、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく自立支援給付と介護保険制度の適用関係等に係る留意事項等について」(平成27年2月18日付け厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課・障害福祉課連名事務連絡)や障害保健福祉関係主管課長会議において、適切な運用に努めていただくよう周知・依頼しているところである。
 令和4年6月にとりまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告書を受け、自立支援給付と介護保険制度との適用関係に係る留意事項及び自治体での運用の具体例等を下記のとおりまとめたので、内容について御了知の上、管内市町村、関係機関に周知徹底いただくとともに、その運用に遺漏なきようお願いしたい。
 なお、本事務連絡については、老健局とも協議済みであることを念のため申し添える。介護保険担当課室へも本事務連絡を情報提供し、適宜、連携を図るようお願いしたい。


1.介護給付費等と介護保険制度との適用関係について
(1)障害福祉サービスに相当する介護保険サービスの特定について
 適用関係通知において、市町村は、介護保険の被保険者である障害者から障害福祉サービスの利用に係る支給申請があった場合は、個別のケースに応じて、当該障害福祉サービスに相当する介護保険サービスにより適切な支援を受けることが可能か否か等について、申請に係る障害福祉サービスの利用に関する具体的な内容(利用意向)を聴き取りにより把握した上で、適切に判断することとしているが、改めて各市町村においては、適切な運用をお願いしたい。
 また、申請に係る障害福祉サービスに相当する介護保険サービスにより必要な支援を受けることが可能と判断される場合であっても、当該サービスの利用について介護保険法(平成9年法律第123号)の規定による保険給付が受けられない場合や介護保険サービスの支給量・内容では十分なサービスが受けられない場合には、介護給付費等を支給するなど、適切な運用に努められたい。
 その際、障害福祉サービスの利用を認める要件として、一定の要介護度や障害支援区分以上であること、特定の障害があることなどの画一的な基準(例えば、要介護5以上でかつ障害支援区分4以上、上肢・下肢の機能の全廃、一月に利用する介護保険サービスの単位数に占める訪問介護の単位数が一定以上等)のみに基づき判断することは適切ではなく、障害福祉サービスを利用する障害者について、介護保険サービスへの移行を検討する際には、個々の障害者の障害特性を考慮し、必要な支援が受けられるかどうかという観点についても検討した上で、支給決定を行うこと。
 また、就労系障害福祉サービスや自立訓練(生活訓練)は障害固有のサービスであり、65歳以降も介護保険サービスに移行することなく、個々のサービスの支給決定の要件の範囲内で引き続き当該サービスの利用が可能である。

(2)具体的な運用の例について
 適用関係通知を踏まえた高齢障害者に対する支給決定について、以下のとおり具体的な運用の例として考えられるものを挙げるので、参考にされたい。各市町村においては、本事務連絡も参考として、自らの運用を確認する等、必要な対応をお願いする。
【具体的な運用例】
 ・居宅介護や重度訪問介護を利用する障害者について、個々の障害者の障害特性を考慮し、介護保険の訪問介護の支給限度額では必要な支給量が不足する場合に、当該不足分について居宅介護又は重度訪問介護の利用を認める。
 ・居宅介護や重度訪問介護を利用する障害者について、個々の障害者の障害特性を考慮し、介護保険の訪問介護の支給対象とならない支援内容や時間(例えば、家事援助として認められる範囲の違いや、日常生活に生じる様々な介護の事態に対応するための見守りなど)が必要と認められる場合に、介護保険の訪問介護の支給とは別に居宅介護又は重度訪問介護の利用を認める。
 ・自立訓練(機能訓練)を利用する障害者について、個々の障害者の障害特性を考慮し、介護保険の通所介護等では提供できない支援内容(例えば、白杖を用いた歩行訓練や意思疎通に困難を生じた場合の訓練等)が必要と認められる場合には、65歳以降も引き続き、自立訓練(機能訓練)の利用を認める。
 ・共同生活援助を利用する障害者について、個々の障害者の状況等から見て必要と認められる場合には、65歳以降も引き続き共同生活援助の利用を認める。なお、当該障害者の要介護度等に応じて、認知症グループホームや特別養護老人ホーム等への入居・入所を検討することが望ましい場合も想定される。

2.適切な支給決定に当たっての留意点
(1)障害福祉サービス利用者への介護保険制度の案内について
 要介護認定等の申請は、申請に係る者の状態について大きな変更が生ずることが見込まれないということから、65歳到達日(誕生日の前日)、特定疾病に該当する者の40歳到達日(誕生日の前日)又は適用除外施設退所日(以下「65歳到達日等」という。)の3か月前以内に要介護認定等申請を受理し、65歳到達日等に認定することを運用上の対応として可能としている。
 そのため、障害福祉サービス利用者の介護保険制度の円滑な利用に向け、要介護認定等の申請から認定結果通知にかかる期間を考慮して65歳到達日等前の適切な時期から要介護認定等に係る申請の案内を行うこと。
 その際には、単に案内を郵送するだけでなく、市町村職員から、又は、(3)にお示しする相談支援専門員から直接、介護保険制度について説明を行うことが望ましい。
 また、介護保険制度を利用することによる利用者負担への配慮として、新高額障害福祉サービス等給付費について、対象者等に対し、制度概要の丁寧な説明を行うとともに、対象となりうる者へ個別に勧奨通知等を送付することが望ましい。
(2)障害福祉サービス利用者等に対する介護保険制度との併給が可能な旨の案内について
 介護保険法の規定による保険給付が優先されることが、あたかも介護保険のみの利用に制限されるという誤解を障害福祉サービス利用者に与えることのないよう、適用関係通知の1の(2)の[2]及び[3]の場合については介護給付費等の支給が可能な旨、利用者及び関係者へ適切に案内を行うこと。
(3)指定特定相談支援事業者と指定居宅介護支援事業者等との連携その他の介護分野との連携について
 障害福祉サービス利用者が介護保険サービスを利用するに当たっては、障害者が適切なサービスを受けられるよう
 ・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)における指定特定相談支援事業所の相談支援専門員がモニタリングを通じて、必要な介護保険サービスを円滑に利用できるよう利用者に対し、介護保険制度に関する案内を行うことや、介護保険サービスの利用に際しては、本人に了解を得た上で、利用する指定居宅介護支援事業所等に対し、利用者の状態や障害福祉サービスの利用状況等のサービス等利用計画に記載されている情報を提供するなど、適切に引継ぎを行うこと
 ・介護保険サービス利用開始後も、サービス担当者会議に相談支援専門員が参加する等して、相談支援専門員と介護支援専門員が情報共有や丁寧な引継ぎを実施すること
等必要な案内や連携を行うこと等の周知をお願いしたい。
 ※ここでいう「指定居宅介護支援事業者等」とは、小規模多機能型居宅介護や介護老人福祉施設のように、人員配置基準において介護支援専門員の配置が義務づけられている事業者を含むものである。
 ※障害福祉サービス等の利用終了後であっても、6月以内において、相談支援専門員が文書による情報提供により居宅サービス計画や介護予防サービス計画の作成等に協力した場合や、月2回以上利用者の居宅を訪問して面接を行った場合、介護支援専門員等が主催した会議に参加した場合等、指定特定相談支援事業者において居宅介護支援事業所等連携加算が算定できる場合があるので、活用されたい。

 加えて、以下のような取組も効果的と考えられ、各市町村の実情に応じて取り組むことが望ましい。
 ・(自立支援)協議会や地域ケア会議等において、介護保険関係者と障害福祉関係者双方が参加して、高齢障害者に係る事例を取り上げ、適切なサービス提供の在り方や共生型サービスを含む必要な地域資源の開発等について検討する。
 ・地域の相談支援専門員や介護支援専門員に対し、介護保険制度と障害福祉制度双方の内容や、両制度の関係、両制度従事者の相互理解等に関するための取組(※)とともに、サービス利用者に対するサービス等利用計画及び居宅サービス計画等作成に当たって丁寧に説明することを依頼する。
(※取組例)
 ・介護保険制度と障害福祉制度双方の内容や、両制度の関係、両制度従事者の相互理解等に関する研修を実施する
 ・地域において居宅介護支援事業者・相談支援事業者・自治体が連絡会議を開催する
 ・地域包括支援センターと基幹相談支援センターが連携して地域での介護・障害連携の在り方を検討する等
 【参考】「相談支援専門員と介護支援専門員との連携のあり方に関する調査研究事業」報告書(平成29年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)p50〜に、相談支援専門員と介護支援専門員の連携に取り組んでいる自治体の事例について記載。
 https://pubpjt.mri.co.jp/pjt_related/roujinhoken/jql43u00000001m5-att/H29_019_2_report.pdf
※なお、介護支援専門員と相談支援専門員の連携、相互理解促進については、令和4年度より都道府県地域生活支援事業において、相談支援従事者養成研修専門コース別研修に「介護支援専門員との連携」コースを設定したところである。都道府県においては、当該研修を実施するとともに、当該研修カリキュラムを市町村に周知するなどし、地域における活用の促進をお願いする。

3.要介護認定等の申請について
 介護保険の被保険者である障害者については、申請に係る障害福祉サービスに相当する介護保険サービスにより適切な支援を受けることが可能か否か、当該介護保険サービスに係る介護保険給付を受けることが可能か否か等について判断するためにも、障害者の生活に急激な変化が生じないよう配慮しつつ、まずは、要介護認定の申請等を行っていただいた上で介護保険制度からどのようなサービスをどの程度受けられるかを把握することが適当である。
 したがって、要介護認定等の申請を行わない障害者に対しては、申請をしない理由や事情を十分に聴き取るとともに、継続して制度の説明を行い、申請について理解を得られるよう働きかけること。その際、介護保険サービスに係る施設・事業所の見学等を案内することも、理解を得る上で有効と考えられること。

4.指定障害者支援施設等入所者の要介護認定等について
 介護保険適用除外施設である指定障害者支援施設等入所者は、介護保険サービスに相当する介護サービスが提供されていること等の理由から、当分の間、介護保険の被保険者とはならないこととされている。一方で、個々の事情に応じて介護保険適用除外施設を退所又は退院することもあり得るが、その場合には介護保険の被保険者となり、介護保険法に基づく要介護認定等を受けることにより、これに応じた介護保険サービスを利用することが可能となる。
 この点、例えば、介護保険適用除外施設からの退所者が介護老人福祉施設等へ入所しようとする場合には、通常、一定の期間を要することから、指定障害者支援施設等の退所日と要介護認定申請の時期の兼ね合いで必要な手続きや調整が円滑に行われないという指摘があるが、介護保険サービスの利用を円滑に進めるために、関係者間での密な情報共有や連携を図ることにより、柔軟に対応願いたい。

5.その他の留意事項
 介護保険サービスへの移行が適当な利用者がいる場合には、介護保険サービスの支給決定を行うことになるが、事業所において、共生型サービスを含む介護保険サービスの指定を受けることで、従来から利用してきた事業所による支援が継続されるよう配慮することも考えられること。


<参考> (通知の原文にはありません)
適用関係通知の1の(2)の[2]及び[3]
[2] 介護保険サービス優先の捉え方
 ア サービス内容や機能から、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合は、基本的には、この介護保険サービスに係る保険給付又は地域支援事業を優先して受け、又は利用することとなる。しかしながら、障害者が同様のサービスを希望する場合でも、その心身の状況やサービス利用を必要とする理由は多様であり、介護保険サービスを一律に優先させ、これにより必要な支援を受けることができるか否かを一概に判断することは困難であることから、障害福祉サービスの種類や利用者の状況に応じて当該サービスに相当する介護保険サービスを特定し、一律に当該介護保険サービスを優先的に利用するものとはしないこととする。
 したがって、市町村において、申請に係る障害福祉サービスの利用に関する具体的な内容(利用意向)を聴き取りにより把握した上で、申請者が必要としている支援内容を介護保険サービスにより受けることが可能か否かを適切に判断すること。
 なお、その際には、従前のサービスに加え、小規模多機能型居宅介護などの地域密着型サービスについても、その実施の有無、当該障害者の利用の可否等について確認するよう留意する必要がある。
 イ サービス内容や機能から、介護保険サービスには相当するものがない障害福祉サービス固有のものと認められるもの(同行援護、行動援護、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援等)については、当該障害福祉サービスに係る介護給付費等を支給する。
[3] 具体的な運用
 [2]により、申請に係る障害福祉サービスに相当する介護保険サービスにより必要な支援を受けることが可能と判断される場合には、基本的には介護給付費等を支給することはできないが、以下のとおり、当該サービスの利用について介護保険法の規定による保険給付が受けられない又は地域支援事業が利用することができない場合には、その限りにおいて、介護給付費等を支給することが可能である。
 ア 在宅の障害者で、申請に係る障害福祉サービスについて当該市町村において適当と認める支給量が、当該障害福祉サービスに相当する介護保険サービスに係る保険給付又は地域支援事業の居宅介護サービス費等区分支給限度基準額の制約から、介護保険のケアプラン上において介護保険サービスのみによって確保することができないものと認められる場合。
 イ 利用可能な介護保険サービスに係る事業所又は施設が身近にない、あっても利用定員に空きがないなど、当該障害者が実際に申請に係る障害福祉サービスに相当する介護保険サービスを利用することが困難と市町村が認める場合(当該事情が解消するまでの間に限る。)。
 ウ 介護保険サービスによる支援が可能な障害者が、介護保険法に基づく要介護認定等を受けた結果、非該当と判定された場合など、当該介護保険サービスを利用できない場合であって、なお申請に係る障害福祉サービスによる支援が必要と市町村が認める場合(介護給付費に係るサービスについては、必要な障害支援区分が認定された場合に限る。)。

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